ポイント1 「家族葬」って、どんなお葬式?
最近、「家族葬」という言葉をよく耳にします。家族葬は故人と家族のお別れの時間を大切にするお葬式のことを言います。
一般のお葬式と大きく異なるのは、参列者についての考え方です。友人知人にはまったく声をかけないで家族・親族だけで行うか、故人とごく親しかった人だけに来ていただく、という形式になります。
そのため、お葬式の規模は小さくなることが多いようです。
式の流れについては、基本的に一般のお葬式とは、大きくは変わりません。仏式の場合ですと、お通夜とお葬式があって、それぞれ、僧侶の方がお経を読んで、遺族や参列者が焼香をして、という流れになります。
ポイント2 家族葬のいいところ
家族葬のいいところは、故人とのお別れの時間をじっくりと過ごせることです。精神的にも体力的にも遺族の負担が少ないということもメリットのひとつでしょう。
通常のお葬式ではたくさんの参列者が来るため、遺族は気をつかいっぱなしで、くたびれてしまうということが多いようです。
参列者の対応に追われて、故人とのお別れがじっくりできないということもあるようです。そんな遺族の負担を軽減することができるのが家族葬なのです。
また、お葬式の費用についても、ある程度軽減することもできるので、その点もメリットと言えるでしょう。
ポイント3 家族葬で注意しなければならないこと
家族葬は通常のお葬式とは異なり、友人知人を呼ばないか、親しい人を数人呼ぶだけ、ということから注意しなければならないことがいくつかあります。例えば、次のようなことが起こりがちです。
・後で亡くなったことを知り、週末のたびに自宅まできてしまい対応に疲れる
・親類などが「参列者を呼ばないなんて、とんでもない」と言いもめてしまう
・後で亡くなったことを知り、「どうして教えてくれなかったんだ」と不満を言う
・式の当日に参列に来てしまう人がいてその対応に追われる
・参列者の数に応じて、香典の金額も減るので、結果的に高くつく
こうしたことを避けるためには、
逝去の知らせとともに、事情により家族葬で行うので、参列をご遠慮いただく胸を伝えることが必要です。
式の前に、こうした内容を書いた文面をファックスなどで送っておくといいでしょう。ただ急なことでこれが間に合わなかった場合などは、式を終えたらすみやかに、ハガキなどで同様の内容をお知らせしてください。
ポイント4 家族葬とお別れ会
お葬式には、家族が故人とお別れをするということに加え、故人が生前おつき合いをしてきた人たちともお別れをするという意味もあります。
家族葬では、こうした役割を充分に果たすことができないので、後日おちついてから、「お別れ会」といったかたちで、あらためて式を行うケースも多いようです。
ひと昔前は、密葬と本葬というかたちで、家族とのお別れと、おつき合いをしてきた人たちとのお別れを別々にやっていた時代もあります。お葬式を、こうして2回にわけて行うのも、後悔の無いお葬式をするための智恵なのかもしれません。
ポイント5 「家族葬」と宗教者
「家族葬」でもほとんどの場合、僧侶などの宗教者に来ていただいて式を行うことになります。
また、まれに宗教者がいらっしゃらない無宗教のお葬式も行われます。ただ無宗教で行う場合でも、もし菩提寺(檀家になっているお寺)があるならば、一度、お寺にご相談されておいたほうがいいでしょう(菩提寺がなければ、あまり気にしなくても大丈夫です。)ご遺骨は、そのお寺のお墓におさめられ、まもっていただくのですから。後になって、お互いが気まずいことにならないようにしておいてください。
ポイント6 家族葬を考える-後悔のないお葬式のために
現代では、古くからのしきたりに必ずしもこだわらずにすむようになり、お葬式もいろいろなかたちを選択することができるようになりました。家族葬というお葬式は、こうした時代だからこそできるようになったと言えるでしょう。しかし、一見意味のないと思える古くからのしきたりにも、実は深い意味があることも忘れてはなりません。お葬式には、そうした日本人の昔からの智恵がたくさんつまっているのです。
この「家族葬について考えてみよう」という小冊子は、家族葬を行う方々に、よりよいかたちでお葬式を行っていただきたいという思いからつくられたものです。家族葬は、現代における新しいかたちのお葬式です。いいところがたくさんある一方で、まだ社会になじんでいない部分もあります。だから、いろんなことに注意して、式を進めていかなくてはなりません。
また前述したように、お葬式は、故人のもの、家族のものであるとともに、故人につながる様々な人たちのものでもあります。そうした方々にも充分な配慮のもとで、お葬式を進めていくことが大切です。